2007/4/1UP


いいもの買おう

 ◆…高級志向でいいじゃないか、と近頃思うようになった。 景気回復でひところのような激安・格安ブームから揺り戻しの時期に入っているとはいえ、それでもなお、本質的な価値ではなく、見かけの価格に引きずられる雰囲気はまだまだあるようだ。 ◆…理想を言えば、150万円の車を3回買うより、450万円の車を奮発して、ずっと乗り続けたい。飽きが来たり、最新の装備がなかったりというマイナス面はさておき、買ったときから廃車になるまで、 「いいもの」ならではの良さをずっと味わえる。もちろん、わが愛車はそんな値段ではないけれど。服でも、安くて良い商品は少なく、多くは値段相応で長持ちしない。 同じ期間着続けるとしたら、結局同じぐらい払う計算になったなどという経験もあるだろう。◆…角田市の小中学校10校で校舎の耐震強度不足が判明し、大規模改修を迫られているというニュースはすでに本紙でお伝えした。 特に構造が弱く、倒壊の危険が高いとされた北角田中は建て替えが決まり、新年度から設計に入る。建設費は試算では15億円と見込まれる。日常の買い物レベルを超え、市民みんなでじっくりと考えたくなる金額だ。 ◆…建設当時は「永久校舎」とうたわれたそうだが、たかだが40年でお払い箱。あまりに割り切れない話ではないか。それにしても、コンクリート造りの建物が古くなると、 なぜあれほど汚らしく、目を背けたくなるのだろう。安造り(?)のせいか、それとも手入れを怠ったからなのか。感性というか美意識というか、本質的に人間にあっていないような気もする。 ◆…好みを言わせてもらえば、どうせ校舎を建て替えるなら木造がいい。紋切り型だが「木のぬくもり」は代え難い魅力だ。吟味した建物ならば、古くなっても味わいが増す。ただ、木造は高くつくらしく、市の方針は今のところ「一般的な校舎の建物で」 という線になりそうだという。◆…広告か何かの文章で、こんな表現を目にした記憶がある。「100年持つ家を建てれば、子は別荘を、 孫はクルーザーを持てるかもしれない」。地域社会に広げて当てはめてみても同じこと。角田だけの話ではないけれど、作っては壊しの繰り返しでは、私たちの社会はいつまでたっても豊かになれない。 どのような建物にするにせよ、100年先まで大切に使われ、愛されるように。それが出来るなら、「高級志向」でいっても無駄遣いとは言われまい。