2007/3/1UP


味わい

 ◆…欲しくて欲しくてたまらなかったはずなのに、手にした途端、急に関心を失ってしまう。 それに似た感覚だったのかもしれない。名取市にオープンした大型ショッピングセンター(SC) 「ダイアモンドシティ・エアリ」。正式開業日の28日、夜ならばそれほど混雑もないだろうと、早速車を走らせてみた。 2時間ほどかけて広い店内をぶらぶらと一回り。きらびやかな光景に、はしゃいだ気持ちになれた一方で、「やはりこんなものか」と冷めた目で見ている自分がいた。 ◆…便利で快適なのは間違いない。車で40分ほどと手ごろな距離というのに加え、一カ所ですべて用事が済むというのはファミリー層にとっては魅力的だ。 洋服、本、映画館、雑貨。デパートの食品売り場で、珍しい食材が手にはいるのもうれしい。通路はもちろん、 各店の店内もゆったりと作られているから、カートのまま買い物ができる。抱っこをせがむまだ小さい子どもをなだめながら、 荷物を両手にぶら下げて、ごちゃごちゃした仙台の人込みを歩き回るあの苦しさを思えば、 「休日に仙台でお買い物」という機会はほとんどなくなるように思った。 ◆…買い物客の利便性など真剣に考えたこともないような商店街や、 街としての熟成が図られぬまま無秩序に「ただある」だけの市街地が多い現状を考えれば、 いずれ日本の都市という都市はいずれ便利で小ぎれいなSCに席巻されてしまうのだろう。 都心部から人の姿が消え、マンションとオフィスビルが連なるだけの寒々しい光景は、 東北の各都市で現実となっている。 ◆…けれど、と思う。メニューが豊富でそれなりにおいしいけれど、心の底からを満たされることがない。 SCはファミリーレストランの料理に似ている。商業資本による経営という本質から、画一化の呪縛から逃れられず、 多くの人の活動の結果と偶然が積み重なり、自然と醸し出されるまちとしての風格や個性が生まれづらいからなのかもしれない。 それぞれ違った味わいがあるからこそ、心は満たされる。開業したばかりでお祭りムードに水を差すつもりはないけれど、 日本中、どこへ行っても同じ味の「ファミレス化」した街ばかりになってしまうとすれば、何だかつまらない。