2003/01/01UP


10年目の朝

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。
個人的にも今年はちょっとした区切りの年になりそうです。 入社以来、盛岡支社を振り出しに始まった記者生活が10年を迎えました。 うろたえ、冷や汗をかき、照れ笑いを貼り付けながら過ごした毎日。 角田支局までまでさまざまな担当を任せれてきましたが、果たして職能が向上したのかどうか自信はありません。 「明日はもっと良い原稿を書こう」。そんなあてのない希望をつないでパソコンに向かってきました。 ◇10年前、入社して初めて書いた原稿を今でも覚えています。岩手県の辺境で牛舎が焼け、 乳牛が焼死した火事。先輩に怒鳴られながら取材し、何度も確認しながら書いた原稿は10行足らず。 それでも、翌朝には早起きして紙面を広げ、自分の書いた文章を何度も読み返しました。紙面の片隅のべた記事。 その短い原稿に、新聞記者になった実感をかみしめました。◇そして今。月に多いときで70本。 支局の原稿は短信や休日当番医、長文の企画ものまで多彩です。「さばく」ように原稿を書きなぐるときもあります。 確かに原稿を書くスピードは上がり、取材も効率的になったのかもしれません。 でも、肝心な「聞く驚き」と「書く喜び」、そして「掲載の感動」が磨耗してしまったという反省が、 澱となって心を濁らせます。◇新年。過去1年を刷新して迎えた朝日は、不思議と新鮮な感情を呼び覚まします。 正月の透き通った空気を肺いっぱいに吸い込み、見慣れた風景を見渡す。 そこに新しい発見と出会いを願いながら、10年目の取材を進めたいと思っています。
 今年も1年、よろしくお願い申し上げます。