2006/09/01UP


疑 問

 ◆…先日、ある酒席で居眠りし、ふと目を覚ましたら、車で来ていた人がいなくなっていた。聞けば「帰った」とのこと。状況から考えると、自分でハンドルを握った可能性がありそうだ。深い怒りを覚えるとともに、心の中で「なぜ」と問わずにいられなかった。「事故を起こせば、すべてを失い、人生を台無しにする。それなのに、よく飲酒運転などできますね」と。◆…普通に生活している普通の市民が、一瞬にして凶悪な犯罪者と呼ばれる。 福岡でつい先日起きた3人の子供の命が奪われた事故を見てもわかるように、市民感情としては、「悪さ」で言えば例えば喧嘩で人を殺してしまった以上に悪い。 空腹のあまりパンを盗んだのなら、「罪を憎んで人を憎まず」と言ってやりたくもなるが、 酒飲み運転だけは同情の余地がない。やむを得ず飲酒運転した、などという状況はほぼないに等しいのだ。◆…被害者はもちろん、加害者の家族もまた悲惨だ。先月行った運転免許更新の講習で、30分ほどの映画を見せられた。 退職した新聞記者が、かつて取材した事件について回想するという設定。ある男性が飲酒運転をして子どもをはねて殺してしまい、逮捕される。残された妻は被害者への謝罪と生活費を稼ぐため仕事を掛け持ちした上で疲れ果て、自殺してしまう。家族がバラバラになり、子どもたちも非行に走る―という、救いのない話だったが、実話をベースに作っているらしく、もっともな説得力があった。◆…とはいえ、いくら言ってもその罪深さがわからない人たちがいるようだ。2000年に、以前支局勤務していた二戸市で、飲酒運転の軽トラックが集団登校中の小学生の列に突っ込み、2人が亡くなるという悲惨な事故があった。 その後、市を挙げた取り組みが始まり、市は飲酒運転で摘発された市民の地区名、年齢、性別を警察から情報提供を受けて公表。さらに、子供たちが「飲んだら運転しないで」などと自筆の手紙を親や商店に送る作戦まで繰り広げた。それなのに、である。事故から3カ月後、市内の中学教諭が、さらに半年後には二戸署の警察官が酒飲み運転で摘発された。 ◆…そうなると、残るは厳しい対応しかない。公務員の例では、事故を起こさなくても飲酒運転は懲戒免職にするという自治体が増えてきた。「うっかりやっちゃった」というわけではないのだから、厳しすぎるということはない。当然、民間企業もこれに習う必要がある。◆…「飲んだら乗るな、乗らせるな」は当たり前。今では、重大な事故を起こせば酒席にいた周囲の人も非難される時代。「飲酒運転をしそうな人がいる会合には行かない」。そんな姿勢も必要になってきたようだ。