2004/10/01UP


ネット世界の脅威

 「各地から反応があって大変でしたよ」。今夏、角田特産の梅干を使った「梅めん」を発売した関係者からうれしい悲鳴を聞いた。紙面でも商品紹介され、思った以上の反響があったという。でも、よく聞いてみると、北海道や西日本からも注文の電話が殺到したという。「本紙は東北でしか発行されてないのにな?」と思って調べてみて合点がいった。どうやらインターネットに記事が掲載されのが理由らしい。記事の反応はありがたいけれど、マスコミの一部である新聞記事がネットで「媒介」されるのもちょっとなあ、と、ちょっぴり苦味が残った。◇そういえば本社時代、ある手形詐欺事件を特集した直後、都内の弁護士から問い合わせの電話をもらって驚いたこともある。同種の以来事件を抱え、報道より踏み込んだ話を聞きたいという。どちらで記事を?と尋ねると「ネットで検索した」との答え。その時も、販売圏に縛られず、情報化された記事が飛び交う電脳空間の広がりに思わず舌を巻いた。◇パソコンさえもっていれば情報に直結できるインターネットは、最も手軽な情報ツールだ。私だって取材手法の一つとして、もはやネットの利用は欠かせない。新聞のような「旧式の」マスコミは、たとえどんな部数を誇っていても、ネットでニュースを探す利用数にはかなうまい。◇冒頭、そんなネットの影響力に軽い嫉妬を抱いたりもしたが、悲観ばかりしているわけではない。情報という具材を持ち込めば、確実に圧倒的な数の客席に運んでくれるネット。でも、それ自体に食材を掘り出し、美食に仕上げる能力が備わっているわけじゃない。紙の上でも、電子画面の上でもいい。そこに地域の「おいしい話」を持ち込むことが、私たち支局記者に達成感を与え、新聞の立派な存在理由にもなってくれるのだから。