2026/11/1UP
結論は急がず
「結論から書く」。新聞記者が教わる基本です。ところが近ごろ、車の中では、なかなか結論にたどり着かない話を楽しんでいます。毎月の走行距離は1500㌔ほどになりますが、運転のお供はポッドキャスト。好きな時に聴ける、ネットの音声番組です。
出発前に番組を選べば、運転しながら、耳から情報を仕入れられます。今年公表されたオトナルと朝日新聞社の調査では、15~19歳の4割が月1回以上利用し、利用者全体の約8割が「ながら聴き」をしているそうです。便利ですね。 ただ、私には便利さ以上に、対談を聞く楽しみがあります。新聞記事は、あらかじめ要点を整理して読む時間を節約します。ポッドキャストは、聞き返しも脱線も、話のうちです。「そもそも、なぜ」と立ち止まる聞き手がいると、こちらも分かったふりをせずに済みます。結論を教わるより、そこへ一緒にたどり着く過程が面白い。ひと頃はやった「タイパ」とは違った構成も魅力の一つです。
JAXAの研究者が語る「ディープな宇宙をつまみぐい」という番組も、ポッドキャストで公開されています。研究を熱く深く語るのが持ち味です。何が分かったかだけでなく、何を知りたくて研究しているのか。人に興味を持てば、専門外の話にも耳を貸したくなります。
そのJAXAの角田宇宙センターで10月13日、「官民共創推進系開発センター」の完成記念式典が開かれました。民間企業の液体ロケットエンジン開発を伴走支援する拠点です。 センターでは利用者への各種の情報提供が行われるそうですが、受け継がれてほしいのは、成功した方法だけではありません。なぜ別の方法を諦め、どこでやり直したのか。そこまで分かれば、後から挑む企業は同じつまずきを避けやすくなります。
長い話が、後に続く人の近道になる。そういう話なら、取材でもたっぷり聞かせてもらいたいものです。最短ルートを急かすのは、カーナビだけで十分でしょう。
