2025/9/1UP
身近な戦後
戦後80年となる今年は、各メディアから積極的に関連ニュースが発信されています。当時幼かった方も高齢となり、実際の戦地に赴いた世代はもう100歳前後。刻一刻と、経験者の生の声を聞くことができなくなる時代が近づいていると強く感じます。
弊紙で連載していた「『戦後」を訪ねて」では、紫電改パイロットの菅野直を取り上げました。「撃墜王」と呼ばれた角田出身の青年がいたことは、支局赴任当初から耳にしていたのですが、取材することがないまま過ごしていました。そのため、取材機会に恵まれたのは個人的にもありがたかったところです。
ただ、記事の枠組みに限界があり、菅野の足跡を紹介するにはあまりに短いものでした。菅野の生涯は、話を聞けば聞くほど個性的で濃密。本来ならば数回続きの連載にすべきだったと少し後悔するほどでした。「撃墜王」の異名から軍人的イメージが先行していましたが、浮かび上がったのは石川啄木の詩を愛し、文学の世界に強い憧憬を抱いていた1人の青年。家庭の事情もあったとはいえ、軍人の道の進むさまに時代を感じざるを得ませんでした。個人の自由が認められている現代社会に改めてありがたさを感じるものです。
余談ですが、菅野の隊長機は、アメリカのスミソニアン航空宇宙博物館別館のポール・バーガー施設で保存されているという話を聞きました。最後に乗った機体は代用で、普段搭乗していた機体に黄色の斜線が入った隊長機ではなかったため、現存していても決して不思議なことではありません。ただ、アメリカに行って確認を…といかないのが残念なところ。遺言により菅野の遺品の多くが処分されているだけに、彼の魂が込められていた紫電改を一目見てみたいとの思いが湧きます。
角田市内にもまだ知られていない「戦後」が眠っていると思います。日々の取材で新たなニュースを見つけ、発信をしていくことはもちろんですが、まず今考えているのは身近なところを見つめ直すこと。90歳を過ぎた祖母から詳しく話を聞いてみたい―。そう強く感じている夏となりました。
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田植えを終えた市内の水田。
収穫時期が待ち遠しい。 |
