2021/10/1UP


宇宙と地球、過去と未来

 台山公園でH2ロケットの実物大模型を眺めながら宇宙に夢をはせ、地球にも思いを巡らせました。正確に言うと、地球に広がる世界の平和について考えました、です。 公園には、角田に生まれた明治、大正時代の詩人吉野臥城の「渾円球上平和の曲」の終連4行を刻んだ詩碑があります。渾円球とは地球のこと。平和の光が地球全体を包むよう願っている詩です。本紙朝刊みやぎ県内版の連載「先人の足跡」で臥城を取り上げるため、8月中旬、公園へ詩碑の写真を撮りに行きました。記事は8月26日付に掲載されています。 読者から「角田に臥城みたいな人がいたとは知らなかった」と反響がありました。詩碑をじっくりと眺めたことがある市民は、あまり多くないようです。1954年に角田城跡(現在の角田高)のふもとに建立され、後に公園に移されました。ロケットより長い間、公園で憩う市民たちを見守っているのですが、詩碑は年季を重ね、刻まれた文言は読み取りづらくなっています。カメラのシャッターを押しながら少し寂しく思えました。臥城は地方にいながら中央文壇にも名をはせたとはいえ、島崎藤村や石川啄木、土井晩翠ら同時期の詩人に比べると知名度が低いのは否めません。それでも角田を代表する文人です。阿武隈川辺や斗蔵山をモチーフにした詩歌もあります。臥城がうたった非戦の思いや故郷愛に市民が触れる機会が乏しいのは残念と、取材を通して感じました。 公園はどうしてもロケットが目を引きがちですが、石川家廟所など歴史を伝える史跡があるほか、隅まで歩けばいろんな碑があることに気付きます。市でタイムカプセルを埋めたことを示す碑もありました。これまた年季の入った碑で文字は読みにくくなっているのですが、「平和を願って21世紀のみなさんへ」とあります。市政30 周年の1988年10月1日に埋設し、50年後の2038年10月1日に開封するよう記されています。 7月下旬に丸森町筆甫小でタイムカプセルを開封する模様を取材したのを思い出しました。1978年に創立100年を記念して校庭に埋められ、 創立150周年時に開封する計画でしたが、筆甫小が本年度限りで閉校するため予定を前倒ししました。カプセル内には、将来について書いた児童の作文や絵画作品、教科書のほか、当時の新聞やチラシなど生活感が感じられる品も。角田市内の玩具店がクリスマスセールとして出したチラシもきれいな状態で残っていました。角田の店のチラシは他にもあり、当時のにぎやかなまちの様子が伝わるようで、角田に住んで2年半の自分も43年前の角田にタイムスリップしたような気分になりました。  台山公園のタイムカプセル内にも、市民が懐かしさで心を躍らせる品があるのでしょう。33年前の市民が50年後の角田をどのように思い描いたかが分かる文書などもあると思います。開封のとき、さすがに私は角田に勤務していませんが、カプセルの中身は気になるところです。 台山公園は宇宙と地球、そして時空を超えて過去と未来の角田のまちに親しみを深められる場かもしれません。一方で、ロケットなど宇宙関連以外のものになかなか光が当たらないのが、台山公園の「現在」です。まずは臥城の詩碑を改めて見直すところから始めてはどうでしょうか。


台山公園にある吉野臥城の詩碑
タイムカプセルの碑

吉野臥城の詩碑