2020/5/1UP


自粛の春

 どうして昨年は気付かなかったのだろう。高蔵寺の公園、阿武隈川や高倉川沿い、角田高の坂道…。角田市内は桜の見どころが多いと、支局生活2年目で知りました。着任したばかりの昨年4月7日に高蔵寺さくらまつりを取材しましたが、残念ながら曇り空で、花も満開とまでは言えなかったと記憶しています。だから印象に残らなかったのでしょうか。 その3日後ぐらいの夜に雪が降ったのを覚えています。翌日に丸森町で「阿武隈ライン舟下り」の運航安全祈願祭の取材がありました。渓谷は所々が白く、桜はしっとりとぬれていました。桜と雪の競演は新鮮な光景ではありましたが、その後は角田の桜も丸森の桜も散るのが早かったような気がします。 天候のせいもありますが、昨年の春は角田市内の右も左も分からず、桜には気が回らなかったのかもしれません。2年目の春は角田での暮らしにもそこそこ慣れ、気持ちに余裕があります。しかも暖冬で開花が早く、天気がいい日も多い。市内各地の桜をのんびりと見て回っています…と言いたいのですが、そうではないのが実情です。  ご存じの通り、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのイベント自粛で、花見ムードもしぼんでしまいました。今年4月上旬の平日に高蔵寺の近くを車で通り掛かり、公園に立ち寄りました。空は青く澄みきっているのに世間のニュースは重苦しく、せめて桜でも見なければ気分が晴れないと思ったからです。昨年は気付かなかった角田の桜の美しさに初めて気付いたのは、その時です。コロナ問題がなく、例年通りさくらまつりが開かれていれば、満開となった角田の桜で今年は紙面を飾れたのに…。考えても仕方ないことですが悔やまれます。  桜が散り始めた4月中旬、阿武隈川河川敷では菜の花畑が満開でした。大型連休中の「かくだ菜の花まつり」に向けて栽培されましたが、新型コロナ問題のために今年は中止になりました。それでも、残雪の蔵王連峰をバックに広がる黄色い海の光景は、今年も変わらず美しく壮大です。外出自粛が要請されている中、せめて紙面を通して多くの人に見てもらいたいと思い、新聞に掲載しました。 本当は現地でも見てほしいのですが、その気持ちを抑え、いかに新聞紙上で観賞してもらうか。来年の楽しみにしてもらうか。その上で、今の美しさをどのように表現するか。わずか20行ほどの記事でしたが、悩みました。息苦しさを感じながらも、伝えるべきは伝えていこうと考えています。


高蔵寺の公園で満開となった桜

阿武隈川沿いの菜の花畑