2020/4/1UP


学びやの心音

 体育館の床下から響き渡るような一打一打の鼓動はまるで、学びやの心音のようでした。角田市の旧小田小の体育館で2月下旬、小田地区の小学生が取り組む「とくら太鼓」の引き継ぎ式を取材しました。卒業を控えた6年生にとっては最後の舞台。5年生以下の児童も交え、勇壮な響きと躍動的なばちさばきが地域住民らに披露されました。  小田小の閉校から9年。子どもたちは地域の伝統を残そうと、体育館で太鼓の練習を続けていると住民に聞きました。人が通わなくなった学校の校舎は、外から見ると冷たく寂しい印象を受けます。小田小も校舎には人の気配が感じられず、近くを通るともの悲しさを感じていました。引き継ぎ式を取材した後は、体育館が温かみに包まれているように思えました。小田地区の取り組みには、学びやでの地域交流を絶やさないという意味でも注目したいと考えています。  市議会2月定例会で、市立学校条例の改正が成立しました。市教委がまとめた基本構想に基づき、2021~23年度に小学校8校を5校に、中学校3校を2校にそれぞれ再編統合する内容です。採決で反対する市議も一定数いたことからも分かるように、教育環境の変化は判断が分かれる重要な問題です。再編統合にかじを切った今後も、新たな学びの場をどう築き上げていくかの議論は不可欠です。それと同時に、旧校舎がどう利活用されるのかも各地域での大きな関心事になると思われます。  若柳支局(栗原市)に勤務していた08~11年、栗原市では当時、小学校30校(分校を含む)を12校に、中学校10校を8校にそれぞれ再編統合する計画が議論されていました。その中の1校、旧栗駒小は13年度限りで閉校し、旧校舎は現在、「栗駒山麓ジオパークビジターセンター」になっています。  栗駒山麓地域が「日本ジオパーク」に認定されたのに伴い、旧校舎を改修し、昨年オープンしました。08年の岩手・宮城内陸地震で生じた大規模地滑りの跡地などを通じ、地質や防災などを学べる施設となっているとのことです。近く足を運ぼうと思っています。展示内容もさることながら、個人的には、かつて取材で訪ねたことがある旧栗駒小の校舎がどう生まれ変わっているか、どれくらい人が集まる施設になっているかにも興味があります。  閉校した学校の旧校舎を全国的にみても、農山村生活体験施設や集合住宅、民間企業の作業場などに再利用されている例があるようですが、もちろんいきなり大胆につくり変える必要はありません。老朽化や耐震性などで使い道に制約がある校舎もあるかもしれませんが、人の息づかいが聞こえる場として持続させることは、地域づくりの方向性に大きく関わります。角田の学校再編統合スタートはもう少し先ですが、いずれ旧校舎や体育館の活用法を市と地域で話し合うことになるでしょう。人のぬくもりで満たされ続けたいと、学びやもきっと願っています。


とくら太鼓の引き継ぎ式

小田小の校舎