2010/12/1UP


心酔わす街

 10月上旬のある週末、角田市の中心商店街を回って、居酒屋やスナックなどではしごを楽しんでもらう「かくだ!ほろ酔い祭り」が開かれた。市商工会の創立50周年記念事業として初めて企画されたイベントだ。車で訪問した、酔っぱらっていると写真撮影に支障が出る―などの理由で、酒が絡む催しでは飲みたい気持ちを抑えて取材することが多いのだが、今回は別。単純に参加者として楽しもうと、あるグループに同行させてもらうことにした。一応、カメラをかばんの奥にしのばせて“ついでに”取材する気持ちで出発した◆結論から言うと、想像以上に満喫できた。参加した64店舗が点在する市中心部をA、B、C、Dの4ブロックに分け、各ブロック1店ずつのほか、さらに1店を回る仕組み。抽選会が行われるゴールの角田駅まで、どういうルートで回るのが効率的かを考えると、なかなか奥が深い。なじみの店にするか、入ったことのない店を訪ねるかも悩ましい。私の場合、5店のうち2店が初めて立ち寄った店だった。各店では中ジョッキに一品料理といった特別メニューが用意された。普通に飲食すれば、1000円近い値段になる。3000円の前売りチケットで5店分味わえるのだから、損をした人はいないだろう◆女性層もうまく取り込んだ。食品、菓子などの詰め合わせを提供し、持ち帰りを可能にした店もあったため、買い物を済ませた後で軽く一杯という女性が相当いたようだ。左党の中年オジサンだけが楽しめるイベントだったら、盛り上がりはいまひとつだったはずだ。知り合いでない人たちが「何軒目?」「あの店は満席だよ」などと声を掛け合う姿が見られたのも面白かった。店側が「普段の週末だったら、こんなにお客さんは来ない」と驚いていたのもうなずける。とにかく、角田にこの晩、大勢の人が集まっていたのは間違いない。グラスを片手に店内で談笑する客、次の目的地を考えながら地図を眺めて通りを歩く人たち。いつもは閑散としている街がにぎわっているように見えたのは、私が酩酊(めいてい)していたからではなさそうだ◆一過性のイベントだけで中心市街地を活性化するのは難しい。それでも角田の街の魅力を市民が再発見できた意義は大きい。少なくとも私はまた行ってみたいと思える店を見つけた。一夜限りではあるが、「元気な街とはこういうものだ。やればできる」という成功体験を手にしたと思いたい。個々の店にとっても自信につながる。さて来年以降はどうするのか。もっと言えば、年1回ではなく複数回開催してほしいとの声もある。実現を期待したい。今度は女性たちを見習い、きちんと作戦を練ってから回らないと。