2010/10/1UP


続・紫煙よさらば

 先月に続き、たばこの話。本欄の第1読者である妻に、禁煙を宣言した前回の記事について「歯切れが悪く、未練たっぷり」とからかわれた。そりゃそうだ。仕方なくやめるのだから。好きなものをあきらめるのに、未練がないと言えば嘘になる◆歯切れが悪いと受け取られた理由の一つに、おそらく“1カ月間の猶予”が挙げられる。9月1日付の本欄に「10月1日に始める」と書き、今後しばらく吸うための逃げ道を作っておいたのだ。ところがその考えは甘かった。開始日がいつであろうと禁煙宣言文が世に出回れば、読んだ人は「既にたばこをやめた」と解釈する。直接誰かに指摘されたわけではないし、猶予期間なのだから堂々と吸ってもいいのだけれど、人前で紫煙をくゆらせるのにためらいを感じた◆そういう経緯もあって禁煙を前倒しすることにした。8月31日の夜に自宅で吸ったのを最後に1本も吸っていない。この原稿を執筆している時点で禁煙23日目である。まだまだ油断できないし、自慢できるほど日数も経過していない。とはいえ、驚くほどあっさりと別れられた。病院や禁煙補助薬の世話にもならなかった。パソコンのキーボードをたたく時にたばこが不可欠だったのに、まるで別人に生まれ変わったようだ。いや、実際に体の中は別人へと作り変えられている途中なのだろう◆それでも3日目から10日目あたりまでは苦しかった。禁断症状はイライラという形で表れた。何だか落ち着かない。ニコチンを求め、自分の中の悪い心が肺からのど元へと手を伸ばしているような感覚だ。幸運だったのは、禁煙前に1本残らず吸い切っていたこと。もし家に残っていたなら「1本くらい…」と誘惑に負けていたはずだ。つらい時期をガムや氷を口に含んだり、深呼吸したりして何とか乗り越えることができた。数字で成果を把握したのも良かった。「禁煙カウンター」と呼ばれるソフトをダウンロードし、携帯電話の待ち受け画面に設定した。禁煙を継続した時間、これまでの喫煙実績から割り出した禁煙本数や節約できた金額などが一目で分かる仕組み。ダイエットを長続きさせるのと同じで、数字を確認するのが楽しみになるし、簡単に断念できなくなる◆いろいろと並べたが、何とか続けられている一番の理由は、皆さんの前で先月公言したからだと思っている。私のように紙媒体でなくても、ブログやツイッターを利用したり、家族や職場の人たちの前で宣言したりするだけでも、引き下がるのは難しい。自分に程よいプレッシャーをかけられるので、禁煙しようか検討中の方にお勧めする。証人である皆さんに感謝の気持ちを込めて、半年、1年と継続できた時はまた報告したい。