2025/12/1UP
正義の矛先
少し時間が経過してしまいましたが、先月行われた知事選は角田市に関係する立候補者もいただけに、いつにも増して関心を持った方も多かったと思います。しかし、選挙戦は思わぬ形で話題になりました。候補者の政策や発言などの情報が、SNSを舞台に意図しない形で拡散。一部では誹謗中傷とも捉えられる投稿も散見され、異様な雰囲気に包まれた選挙戦となりました。
興味深いのは、X(旧ツイッター)の関連発言の多くは関東圏からのもので、宮城県内からの発信量を上回っていたことです。直接的に関係ないであろう第三者にも関心を持ってもらえることは前向きに捉えたいものです。が、誤った内容がそのまま拡散し続けてしまう現象については、SNS社会の難しさを感じさせられました。
SNS空間では、事実に基づいたニュースよりもフェイクニュースの方が何倍も早く拡散されると言われています。平凡な真実よりも刺激的で斬新なデマの方が興味をそそられてしまうためでしょう。たとえ間違った情報であっても、SNSで「バズる」ことで収益化できてしまう現状も課題と言えます。
また、事態を複雑化させてしまっているのは、誤った情報を真実と信じ込んでしまった場合、デマ拡散の助太刀をしてしまうことです。そして、その正義感が誹謗中傷につながっているように感じます。「正義という電球が脳の中に輝いてしまった人間は、極端に殉教者になるか、極端に加害者にならざるをえない。正義の反対概念は邪義であり、邪義をたおさないかぎりは自己の正義が成立しようもない」
作家・司馬遼太郎はそんな言葉を残しました。バランス感覚を欠いた正義は結局、問題の解決を遠ざけます。何より、自身の正義のために徒に他者を傷つけていいわけがありません。大切なのは、自分と異なる意見に対して冷静に耳を傾けること。フランスの思想家ヴォルテールのものとされる金言を思い出します。
「私はあなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」
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田植えを終えた市内の水田。
収穫時期が待ち遠しい。 |
