2014/5/1UP


フィルムカメラ

 「一眼レフを使うの初めてなんですよ」と4月から市の広報になったFさんに言われ、私も初めてカメラを手にした10数年前を思い出しました。入社早々、写真部の勧めで買ったのはフィルムカメラのニコンF60。絞り、シャッタースピード、ISO感度と被写体深度の関係など基本事項を研修で教わりましたが、何がなんだか分かりません。習うより慣れろということで、フィルムを何本も無駄にしました。高校野球の取材で手渡されたのは、連写の効くモータードライブ付きのF3。ずしりと重い上にマニュアルフォーカスで、素人の身には使いづらいものでした。「インパクトの瞬間を捕らえた」と思っても、現像するとピントが甘く、球が写っていないことがしばしば。「使える写真がない」とよく叱られました。フィルムカメラを使ったのは最初の1年だけで、翌年以降は全社的にデジタルカメラが配備されました。当初のデジカメは選挙の万歳シーンでも「すみません、ちょっと手を挙げたまま止まってください」と頼まないといけないほどでしたが、そんな状況もすぐに解消されました。支局で現在使用しているカメラはキャノンEOS―kissです。何台か別の機種を経て2006年に配備され、記者が代々引き継いでいます。デジカメになって写真の処理や送稿のスピードは格段に速まりました。撮ってすぐ写真の出来を確認でき、失敗することも少なくなりました。しかし時折、「フィルムの時の方が、みんなもっと考えて写真を撮っていたような気がするよ」という引退されたデスクの言葉が思い起こされます。