2012/4/1UP


ライバル兼仲間

 当たり前の話だが、河北新報以外の新聞やテレビも、角田市内で起こるニュースを発信している。登場頻度、扱いの大きさなどに多少の差はあっても、他の記者やテレビカメラマンが持つ関心のベクトルは、私と極端に違わない。「面白い」「重要だ」と思うから取り上げる。河北を除くほとんどの報道機関は白石市などに県南の拠点を置き、仙南2市7町(震災後は亘理郡2町を含む場合も)を1人で担当している。角田市はその取材エリアの一部。白石市役所には私も加盟している仙南記者クラブがあり、そこに情報が集まる仕組みになっている◆他の業種と同様、同業他社というのはライバルだ。他社にない商品、サービスを提供する努力をしなければならない。マスコミの場合、他社の記者に悟られぬようポーカーフェースを装って、自社だけの独自ネタを追い求める。逆に、彼らがどんな取材をしているのかは非常に気になるところ。ニュース番組を見たり、翌朝の新聞に目を通したりするまで、相手の行動は分からない◆ただ、単純に競い合う関係かと聞かれたら、そうとは言えないのが記者「仲間」。困っている時は互いに助け合うこともある。駆け出しの若手が集まる警察担当の記者クラブなどでは、先輩記者が他社の新人を連れて飲み歩くのは日常茶飯事だ。同じ場面を取材して苦楽を共にする機会が多いため、会社の同僚以上に共感を抱いたとしても、何ら不思議ではない。他社の記者同士が交際、結婚に至るケースもかなりある。夫婦間の秘密が増えてしまわないかと余計な心配をしてしまうけれど、そういったカップルが周りにも少なからずいる。かつて赴任した秋田県横手市で働いていた記者たちとは、現在も交流を続ける間柄だ◆さて、話は仙南記者クラブに戻る。メンバーの中で、30代半ばの私は年少の部類。一線の記者を指導するデスク経験がある記者、定年退職した後に嘱託社員になって取材を続ける大ベテランもいる。普段は和気あいあい、勝負所では勝負する。都市部の記者クラブでは味わえない、独特な雰囲気がある。取材対象は首長、議員ら年配者が中心。時には相手が嫌がる質問をしなければならない。会見などで若手記者が尋ねても、けむに巻かれるかもしれないが、熟年記者がいれば援護射撃をしてくれる。こちらとしては大変心強い。私を含めて幸い、春の人事異動で県南を離れる人はいなかった。適度な緊張感と親しみを併せ持った仲間でまた、新年度を迎え、しのぎを削る。