2010/7/1UP


良縁は田んぼにアリ !?

 「婚活」(結婚活動)という言葉が世の中に登場して3年くらい経つ。お見合いパーティーや合コンなどに積極的に参加し、結婚相手を探し求める。「就活」(就職活動)になぞらえたこの造語は、女性自ら動くことに対する抵抗感を薄め、明るいイメージすら植え付けた。角田市西根地区でも婚活ブームに乗ったイベントが5月下旬、初めて企画された。色違いの稲を植えて水田に絵を描く恒例の田んぼアートづくりを、未婚の男女に体験してもらおうという試みだ◆主催者は当初「婚活を前面に出しすぎると、委縮してしまうのではないか」と懸念していたようだ。そうはいっても「田んぼアート」「田植え」に「婚活」の要素が組み合わさってこそ、ニュースとしては面白い。事実、イベントを事前に紹介して参加者を募集する記事には「婚活」という見出しが躍った。関係者の心配をよそに、定員20人をはるかに上回る申し込みがあった。女性の方が意欲的らしく、男女比のバランスをとるのに苦労したという。各種の婚活支援情報サイトにも本紙記事が引用されているのを見つけ、婚活ビジネスの需要の大きさにあらためて驚いた◆当日はさぞかし盛り上がるだろうと思いきや、実際に参加した男女は、意外なほど淡々と振る舞っているように見えた。泥に脚をとられる女性に優しく手を差し伸べる男性…そんな光景を期待するのは前時代的なオジサンの発想なのかな。まだ若いと思っている自分は「もし独身だったらこんな風に行動するのになあ」と、意味のないシミュレーションをしながら、交流する様子を眺めていた。でも冷静に考えてみれば、取材に来ているテレビのカメラマンや新聞記者がいる前で、見せ物のように親交を深めるはずがない。後から聞いた話によると、“邪魔者”が帰ってから連絡先を交換していた男女もいたらしい。表向きにはどうであれ、カップル成立へ着実に歩を進めていると信じたい◆イベントでは別の収穫もあった。スタッフをはじめ、地元住民から西根地区の魅力を知ってもらおうという熱意が伝わってきた。縁結びを後押しすることで西根に住んでもらい、少子化に歯止めを掛けることが究極の目標なのだが、イベント自体が地域に活力を与えた。最近は縁談を持ってくる会社の上司やおせっかいな親類をほとんど見掛けなくなったけれど、角田には世話好きな人たちがまだいる。それが何よりうれしかった。ハートの中で笑うおにぎりのキャラクターが、田んぼに浮かび上がりつつある。本欄が掲載されるころには、共同作業の出来栄えを確認する2回目のイベントも終わっている。実りの秋が今から楽しみでならない。